日本のブロガーである和中氏は、彼の最近の投稿の中で、広島と長崎では原子爆弾が爆発しなかったと論じている私の著書『Hiroshima Revisited』を批判している。和中氏は特に第6章に焦点を当てており、広島の原爆によって放出されたとされる中性子放射線に関する物理学的研究について論じている。その論理や根拠は以下の通りである:
- 爆弾から放出され地面に到達した中性子は、そこにある原子核にランダムに吸収される。
- 中性子を吸収した原子核の一部は、それによって放射性となる。
- 後日、そうした原子核の放射能を測定することで、爆発によってどれほどの中性子放射線が放出されたかを特定することができる。
問題となる放射性原子核は、それぞれ異なる元素や同位体に属しており、それぞれに特有の半減期やその他の性質を持っている。それらの同位体の相対的な存在比率から、原爆中性子のエネルギースペクトルに関して、いくつかの結論を導き出すことができる。さらに、爆発地点からの距離が異なる場所で採取された試料を比較することで、原爆中性子がどれだけの距離を移動したかを特定することができる。
以上が理論的な説明である。さて、こうした研究(つまりDS02)の「研究前提そのもの」が、明らかに私の著書の中心的な主張と相容れない。もし実際に原子爆弾が爆発していなかったとしたら、中性子によって誘発された放射線は一体どこから来たのだろうか? 私は、中性子照射を受けた試料はすべて、まさにこうした研究のために捏造されたものだと主張している。そしてここで、極めて重要な点を強調しておかなければならない:
私が中性子研究を偽造であると断定したのは、その研究の内部にある矛盾のためではなく、研究の範囲とはまったく無関係な証拠に基づいてのことである[1]。
その証拠の一つとして、爆心地付近で、本来なら生存不可能とされるレベルの放射線を浴びたにもかかわらず、生き残った人々が相当数存在することが挙げられる。私の著書にも関連する統計データが掲載されているが、林千勝氏の『広島・長崎 悲劇の正体』では、より説得力のある詳細情報や当事者の証言が掲載されている。さらなる理由や中性子放射線に関する研究などよりも、「そこで生存できたという事実」を優先すべき理由については、私の著書またはその日本語訳『偽装された原爆投下』を参照されたい(こうしたケースでの科学的重みづけとしては、直接的効果が優先され、後日の測定などの間接的効果の評価エビデンスレベルは落ちる)。
和中氏は(DS02と同様に)この前提を無視しているため、自身の分析全体を、誤った前提から始めてしまっている。彼は次のように書いている。
1990年代には、「DS86中性子問題」が議論された。広島の爆心地から遠く離れた場所のサンプルから、理論からの予想計算値を上回る放射線量が測定されたというものである。これは無視しえない学術的争点である。パルマーはこの不一致を、データが捏造されたという主張の出発点として利用している[2]。
和中氏は、私の著書の該当するくだりを、私が重視している文脈から切り離して解釈し、「その目的が中性子データの捏造を証明することにある」と想定している。しかし、私の真意は、単にそれらがどれほど巧妙に捏造されたかを検証するだけのことである。したがって本章全体の意義とは、本書の中心的な論旨(被害の直接効果が原爆出力に合わないこと)に対する単なる脚注に過ぎない。
ここで中性子研究の内容に焦点を当てると、私自身の主張と和中氏の主張の違いは、次のように要約できる。
- 私は、中性子放射線に関する古くからの一連の研究には、解決できない矛盾が数多く含まれていると主張している。
- 和中氏は、古い時代の矛盾は重要ではないと主張している。中性子放射線に関する最新の研究のみを有効とみなすべきであり、それ以前のものはすべて無視すべきだという。
繰り返すが、ここで問題となっているのは、捏造手段の巧妙さだけである。私は、それが露見していると主張する。もし和中氏が、中性子線が存在したと上手く述べられたとしても、それは研究が「より巧妙に捏造されていた」ことを意味するだろう。実際のところ、彼はDS02の主張を証明していない。これは後述部分で明らかになるだろう。
中性子放射線に関する研究における中心的なパラメータの一つが緩和長(減衰長)であり、これは中性子がその経路上の原子核に「吸収」されるまでに、平均して空気中を、どれだけの距離を移動できるかを表している。1950年代にネバダ州で開始された実験研究により、緩和長は235メートルと算出されていた。広島と長崎の異なる大気条件下では、198メートルという値が想定された。その後、両都市から採取された試料における中性子誘発放射能の測定により、この値が裏付けられた。それにもかかわらず、1980年代初頭、「緩和長を
155メートルに短縮すべき」とする新たな理論モデルDS86が提唱された。当然のことながら、この新しい理論による推定値は、既存の測定結果と矛盾していた。さらに、その提唱後に実施された測定研究でさえ、新しい理論ではなく、従来の理論を引き続き支持する結果となった(もちろんサンプルは当時の古いもの)。
このような状況下で、まともな科学者ならどうするだろう? 研究結果が合っていないことを認め、自らの理論がエビデンスによって否定されたことを受け入れ、より優れた改良された理論を探すはずだ。しかしながらこのケースでは、わざわざ探す必要すらなかった。単に古い理論に戻ればよかっただけなのだ!
しかし、広島のデータを担当する科学機関はそうしなかった。その代わりに、提唱後から
10年以上にわたって適合する証拠が一切得られないままに、頑なに新しい理論に固執し続けた。つまり彼らが追求していたのは科学的真実ではなく、政治的な意図に合わせる行為だったのは明らかだ[3].。
安堵が訪れたのは2000年代初頭になってからで、理論計算と実験データの両方に合うように、「新しく改良された」バージョンに更新された公式報告書が発表された時だった。これが、和中氏が自身の投稿で取り上げているDS02報告書である[4]。この報告書における新たな計算は、「大した内容ではない」と評することができる。また以前の理論からの変更点はごくわずかであり、両バージョンを区別するために利用可能な実験データの精度も極めて低い。そのため、なぜこれらの新たな計算を作成し、公表する価値があると考えられたのか不思議に思える。私の推察では、それらが「新しく改良された」証拠を公表するための、単なる口実に過ぎなかったのではないかと疑っている。
それでは、その証拠について見てみよう。和中氏の投稿では、中性子放射線によって生成される3つの放射性同位体(塩素36、ユーロピウム152、コバルト60)に関する測定結果が取り上げられている。いずれの場合も、彼は、旧説と一致していた従来の測定値は破棄し、新説に合致する新しい測定値を受け入れるべきだと主張している。基本的な論点はどのケースでも同じである。すなわち以前の研究では、測定信号に含まれるある種の自然背景放射線の寄与(上乗せ)が見落とされており、それが誤って爆弾の放射線として計上されていたという。爆発地点から離れるほど、こうした背景放射線の割合は大きくなるため、爆発地点に近い場所で採取された試料と比較して、測定値は遠位で過大に表示されてしまう。その結果、緩和長、すなわち中性子の到達距離の推定値が過大評価されてしまうことになる。
和中氏の主張に妥当性があるかどうかを判断するには、次の点を問わなければならない。すなわち、先行研究の著者たちは、バックグラウンド放射線を「本当に考慮に入れてなかったのか?」、それとも「本当は考慮していたのか?」。詳細な議論に入る前に、2つの一般的な指摘をしておきたい:
- 研究者たち(しかも単一の研究者ではなく、数十年にわたる研究活動を通じて複数の研究グループ)が、そのような重大な過ちを犯し続けていたという発想そのものが荒唐無稽である。実験研究のための教育を受け実際に施行した経験を持つ者なら、誰一人として、そんなお粗末な失敗があったなどと考えもしないだろう。
- それらの研究がバックグラウンド放射線を考慮していたかどうかを検証するには、当然ながら論文を全文読む必要がある。しかし、和中氏は次のように述べている。「1992、2005年、2008年の論文については、要旨のみを検討した。論文の全文は検討していない」。 これは、彼が自身のブログ記事で引用している論文に関する記載である。おそらく彼は、私の著書で引用されている研究論文も一切読んでいないのだろう。
初期の論文を否定する前に、もしもいくつかの論文を実際に調べてみれば、以前の研究者たちが背景放射線の問題を十分に認識していたことがすぐにわかるだろう。コバルト
60放射線に関する最初の論文は、1967年に橋爪らによって発表された。そこには次のように記されている[5]:
したがって、分光器のバックグラウンド(自然放射線などの、いわゆるノイズ)は、
GM管のバックグラウンドによって制限され、宇宙線粒子(ミューオン)によるバックグラウンドとの識別は、パルス高の選別によって行われる。この種の検出器の詳細な性能については、すでに報告されている16-18。
その後、コバルト60放射線を調査したすべての研究者は、この初期の研究に精通していたと推測できる。そして、さらに改善しようと試みる中で、同様にバックグラウンド放射線を考慮し、補正するために最善を尽くしたはずである。これらの初期の研究者たちは、
DS02報告書が作成された当時よりも精巧さの落ちた測定機器を用いざるを得なかったものの、信号対雑音比が高いという利点には恵まれていた。例えば、1967年から
2000年の間に、核爆発によって生成されたコバルト60の放射能は、およそ75分の
1まで減衰していたはずである(つまりノイズに対してコバルト60の放射能は高かったので、主信号の検出は後の時代よりも容易だったはずだ)。
塩素36の初期の測定結果は、1992年にストラウメらによって報告された[6]。和中氏は、これらの著者らが考慮していなかったとされる塩素36の自然バックグラウンドを大いに問題視している。しかし、この研究の「表1」には、正確に1708メートルの「傾斜距離」で採取された4つの試料が記載されている。これは地上距離で爆心地から1606メートルに相当し、調査対象となった全試料の中で最も遠い距離である。したがって、「バックグラウンド放射線への無視が誤った測定値を生んだ」と指摘される点に関して、最も重要な資料になる。4つの試料はすべて同じ建物から採取されたもので、そのうち2つの試料は、爆弾の放射線に被曝したと記述されている。これらの試料について、安定同位体である塩素35に対する塩素36の存在比は、それぞれ579 × 10-15および310 × 10-15と示されている。残りの2つの試料は「完全に遮蔽されていた」と記述されており、表の中では明確に「バックグラウンド」に該当する資料だと記載されている。測定値は、それぞれ120 × 10-15および
125 × 10-15である。明らかに、ストラウメとその共著者たちもバックグラウンドの問題を認識しており、それに対処していたのである。
ユーロピウム-152に関する研究において、バックグラウンド放射線を無視したとして、後に非難された研究者を引用させてほしい。それは静間清であり、彼は3人の同僚と共に、まさにバックグラウンド放射線を最小化するための研究を発表していた[7]。 この研究の要旨を次のように述べている:
原爆中性子によって誘起された残留Eu152の放射能を測定するため、低バックグラウンドのガンマ線分光計が作製された。通常の同軸型およびウェル型のGe検出器について、鉛遮蔽材の最適厚さ、内張り、およびバックグラウンド特性を調査した。さらに、ウェル型検出器にはアンチコインシデンス遮蔽を設置した。その結果、宇宙線に起因するバックグラウンド計数率は大幅に低減された。また、Eu152の測定においては、対象となる放射能物質を濃縮して、バックグラウンド放射能を除去するための試料調製が重要であることが分かった。
私はこの技術的操作の妥当性を明らかにするために、この分野を専門とするドイツ人研究者に連絡して相談した。「静間氏は一貫して、極めて慎重かつ正確に研究を行った」と賞賛している。これはまさに、静間氏の論文を読んだ際に受ける印象そのものである。これまでの話を要約すると、「静間氏やその他の先行研究者たちがバックグラウンド放射線を無視していた」とするDS02報告書の主張は、荒唐無稽なだけでなく中傷的ですらある。和中氏は自説としてDS02の主張を肯定する前に、こうした内容を吟味すべきだった。DS02と同じ主張を繰り返すべきではなかった。
和中氏はユーロピウム152に関して、そのガンマ線のエネルギーがアクチニウム
227のガンマ線と類似しているため、区別できないとも主張しているが
- これら2つの同位体のシグネチャ(その同位体に特徴的な信号など)を区別できる検出器は、かねてより利用可能であった。
- アクチニウム227は半減期の短い同位体であり、ウラン235およびトリウム232の崩壊系列の一部としてのみ存在するため、常にそれらの系列に含まれる他の同位体と共に検出される。したがって、たとえその放射能がユーロピウム152の放射能によって覆い隠されたとしても、他の同位体のシグネチャに基づいて計算し、補正することが可能である。
もう一つの選択肢は、同位体組成を測定する前に、試料からユーロピウムを化学的に抽出することである。実際、静間らによる研究(上記の引用参照)では、この方法が採用された。したがって、和中氏(DS02)が指摘した問題点は対処可能であり、実際に解決されてもいた。
以上の点は、後に論争の的にされたバックグランド問題が、すでに解決されていたことを証明している。古い研究では実際にバックグラウンド放射線が考慮されていたため、DS02報告書で古い時代の測定値を無効にした理由は破綻している。したがって、古い実験データセットと新しい実験データセットの間には、未解決の矛盾が残されていることになる。私の著書の第6章では、和中氏が論じた点よりも、さらに顕著な矛盾をいくつか挙げている。科学的に厳密に言えば、これらの矛盾は、データの「一部」が捏造されたことを証明するに過ぎず、「すべて」が捏造されたとまでは証明できない。冒頭で指摘したように、後者の主張は、こうした研究が言及できる範疇を超えた領域の議論になってしまう。
和中氏は、私の記述内にその他にも誤りがあるとして挙げている。しかし、それらは上述事項と同様に、彼自身の誤謬や誤解に起因するものである。それらについて詳細に論じることには、読者の時間を割く価値がないと考える。したがって和中氏に対しては、次回はまず下調べをしっかりと行うよう勧めて、この文章を締めくくりたい。
注釈および参考文献
[1] 少々陳腐な例えではあるが、ある警察官が、X氏がY氏を「同日に銀行強盗を犯した」と告発しているのを聞いている場面を想像してほしい。その警察官は、前日に別の銀行強盗の容疑でY氏を逮捕していたため、X氏の証言の詳細を検討しなくても、X氏が嘘をついていることは分かる。
[2] 和中氏の投稿からのすべての直訳引用は、DeepLを使用して翻訳した。
[3] この一連の出来事の背景にあったであろう動機については、私の著書の第11章で扱っている。
[4] Young, R.W. and Kerr, G.D. (2002) Reassessment of the atomic bomb radiation dosimetry for Hiroshima and Nagasaki: dosimetry system 2002 https://www.rerf.or.jp/library/scidata/scids/ds02
[5] Hashizume, T. et al. (1967) Estimation of the air dose from the atomic bombs in Hiroshima and Nagasaki. Health Phys. 13:149-61 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=6029426
[6] Straume, T. et al. (1992) Neutron discrepancies in the {DS}86 Hiroshima dosimetry system. Health Phys. 63:421-6 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=1526783
[7] Shizuma, K. et al. (1992) Low-background shielding of Ge detectors for the measurement of residual 152Eu radioactivity induced by neutrons from the Hiroshima atomic bomb. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. B 66:459 – 464
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0168583X9295419R
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